ミラノからバーゼルへ(2018/12/03)
目次
イタリアで初めて訪問した街は
所要で始めてイタリアを訪問した都市はミラノでした。もちろん有数の観光地ですから出かけられた方も多いと思います。
ローマは
イタリアは首都ローマが半島のほぼ中央に位置しており、北にミラノ、トリノ、ヴェネツィア、フィレンツェなどの都市が位置して、南にナポリが位置しています。面積が日本より少し狭いので距離としてはそれほど離れていません。
ローマが政治と観光が中心で、ナポリは観光が中心の都市で近くにヴェスヴィオス火山があることでも有名です。鹿児島市とは火山が縁で日本最初の姉妹都市となっています。
ミラノは
一方ミラノはドーナツ化現象で若干減少したが都市の人口は約137万人、都市圏では約530万人を抱え都市圏としてはイタリア最大となっています。
金融業、商業、化学工業、世界のファッションを支える服飾・繊維産業などが盛んです。最近ではさらに航空機産業、精密機器工業、自動車産業なども発達しておりイタリアで最大級の経済地域を形成しています。
急遽ヴェネツィアへ
所要が終わったので、休日を利用して以前から一度は行ってみたいと思っていたヴェネツィアへ急遽行ってみよういうことになりました。ミラノ中央駅からヴェネツィアのサンタウルチア駅までは高速列車で2.5時間で掛かります。この駅がヴェネツィア観光には便利らしいです。
とにかくあまり時間的な余裕がないので、サンマルコ広場とゴンドラに乗ることに絞りました。サンマルコ広場はヴェネツィアの中心的な広場で,回りをドゥカーレ宮殿やサン・マルコ寺院などに囲まれ回廊となっています。ビザンティン建築様式だそうです。
ゴンドラです。前後が特徴的に反りあがった平底船なんですね。運河の中を通る重要な交通手段にもなっています。乗船時間にもよりますが約5000円から乗れるようです。これはなかなかいいですが贅沢をいえばおっさん二人ではなく、恋人か新婚さんが乗ると良いですね。
バーゼルへ列車で
大急ぎで往路と同じく列車でミラノに引き返し次の目的地であるバーゼルに向かうことにしました。移動は列車です。
ヨーロッパは列車による交通の便が良くて時間的に余裕がある時は途中の風景を楽しみながら列車の旅をするのもありですね。ミラノ中央駅を朝出発して暫く平原を走った後はゆっくりとアルプス山地に向けて登っていきます。
この風景を見たくて列車に乗ったところもあります。途中国境付近で車掌さんが回ってきて、「パスポートと乗車券を拝見、OK」で簡単に国境を通過しました。バーゼルに到着する前に少しばかり。
モンテカチーニ社
皆さん、ミラノのモンテカチーニという会社をご存知でしょうか。そうですね、ご存じない方がほとんどなのも仕方ありません。日本とも関係の深い会社なのです。
1988年に硫化鉱鉱山で創業。その後肥料,化学繊維,金属などで発展しました。1962年にエジソン社と合併してモンテエディソン社となりました。モンテカチーニ社時代にドイツのチグラー触媒をベースにナッタにより開発されたポリプロピレン用の重合触媒が画期的でした。
石油化学工業の発展に貢献した触媒
日本では1960年台に本格的に始まった石油化学工業では、石油を分解精製して大量に出てくるエチレンはポリエチレンとしてそれぞれの用途に向けられましたが、プロピレンが余剰となっている状況下で、ポリマーにする重合技術は大いに注目されました。
世界中の石油化学企業がこの重合技術の導入を目指しモンテカチーニ社に日参しました。所謂「モンテ参り」とも云われています。結局日本を含め数社に技術がライセンスされて、さらにこれをベースに企業ごとに更なる開発改良が加えられて今日に至っています。
生活を支えるポリプロピレン樹脂
ポリプロピレン樹脂は軽量で丈夫なことから、その用途はフィルムから成型品まで多方面にわたります。例えば包装材料、繊維、文具、プラスチック部品、種々の再利用可能な容器、実験器具、スピーカーコーン、自動車部品、紙幣などがあります。
一般家庭の様々な所で使われている衣類、オムツ、フィルム、シート、食品用タッパー、DVDケース、ロープ、カーペット、靴下、下着など。工業用としては、医療用注射器、建設資材としての電線ケーブル、光ファイバー被覆、自動車部品など数えきれないほど幅広く使われています。
カーボンナノチューブ(CNT)
ポリプロピレン製造用のチーグラー・ナッタ触媒には続きの話があります。一般にはまだあまり知られていませんが、カーボンナノチューブCNT(CNT)というものがあります。偶然にもこの触媒がカーボンナノチューブ製造に貢献しているというのです。
ナノチューブとは直径が1nm(10億分の1m)のカーボン分子が繋がって出来たチューブで電気的な導電性と半導電性を持つことから、これを上手く使うことで、半導体材料として使用できないかという研究が行われています。
現在使用されているシコン半導体に比べて格段に良い性能を持っているようですが、難点はコストが大幅に高いということです。
半導体素材として注目されるCNT
現在のシリコンウェーハーの細密化技術は限界に近づきつつあります。コンピューター社会の発展を進めるためには、さらなる高性能の半導体が求められています。時間はかかりそうですが工業生産可能なカーボンナノチューブを始めとする有機系半導体の実用化が待たれています。
ミラノへ再び
後年再びミラノを訪れる機会がありました。石油化学や半導体関係の仕事ではありません。無機化学関連の仕事でした。それにしてもミラノとは不思議な縁があると感ぜざるを得ませんでした。その時の話はこちらをどうぞご覧になって下さい。(2019年6月22日、追記)
バーゼル
ミラノから列車で4時間10分、約4600円で到着しました。中心街のホテルにチェックイン。一息ついたところでホテルの近くのレストランへ、予てから食べてみたいと見たいと思っていた本場スイスのチーズホンジュを注文してみた。美味しかったです。
スイス料理はフランス料理、イタリア料理、さらにドイツ料理の影響を受けた部分もあるようですが、訪れたその国の料理をまず食するのが一番だと思いました。白ワインの味が残っていて美味しかったです。
バーゼルの街は
バーゼルはスイス北西部ドイツ、フランスとの国境に接していてライン川に跨る街です。チューリッヒ、ジュネーブに次いで第3位の街です。
人口は約17.5万人、ライン川を大型船が遡行する最上流港で貿易の拠点になっています。街として長い歴史があり、古くから織物、染料などが盛んでこれらが発展して現在では化学、製薬、製紙などの産業が盛んです。
三国国境の街バーゼルには見ておきたい観光スポットが結構あります。バーゼル大聖堂、三国国境橋、バーゼル市庁舎、マルクト広場、バーゼル中央駅、バーゼル製紙印刷博物館、ラインの渡し舟などあります。事前に案内書などをみておくと良いと思います。
筆者らは翌日所用を済ませた後、時間があまりないので三国国境橋、バーゼル中央駅、バーゼル市庁舎などを見て帰国の途に就きました。
まとめ
(1)国の発展成長は革新的な技術の創出に負うところが大きいこと
(2)イタリアは一時は時代の先端を走った国ですが、現在は暫くゆっくりして次への飛躍の力を蓄えているのでしょうか。多くの遺産や遺跡を見る度に思ったこと
(3)イタリアは多くの観光資源に恵まれています。明るく温暖な気候と陽気な人々の対応は観光立国に適していると思ったこと
(4)スイスは堅実にマイペースで前進しているように思えたこと
などでしょうか。
後年モンテジソン社(その後合併して名前が変わった)を訪問することになるのですが、その時の話は後ほど書く予定です。最後までご覧いただき有難うございました。