ブリストルへ再び(2019/01/11)
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ブリストル
ブリストルはイギリス西海岸に面した港湾都市で人口はおよそ40万人余りです。ロンドンからおよそ170㎞離れています。ロンドン、ブリストル間は列車で1時間半程度、本数も多いのでアクセスは便利です。港湾設備を背景に製造業が盛んで航空機や自動車工場があります。
ブリストルへ
そのような状況のなかでブリストルに立地するある企業から、筆者が関係する技術に興味があるので提供できないかとのコンタクトがありました。この会社はイギリスに本拠地があるグローバルに広い分野のビジネスを展開する大企業グループのケミカル部門を担う一つの会社です。日本の企業の中にも取引関係がある会社が多いと思います。
製造技術は
ヨーロッパに来る機会がありましたので、この会社を訪問することにしました。先方の話を聞きますと高純度のリン酸を製造販売したいとのことでした。
リン酸の製造方法としては;-
1)乾式法 リン鉱石にコークスと珪石と混ぜて電気炉に投入して溶融します。発生したリン蒸気を冷却して黄リンににしてさらに空気とともに燃焼して五酸化リンにして水に吸収させます。純度が高く製品が得られます。
2)湿式法 リン鉱石を硫酸に溶かしてリン酸と石膏を得ます。得られるリン酸の多くはリン酸アンモニア系肥料になります。また一部のリン酸は精製されて高純度のリン酸となります。
原料は周辺の企業から入手できるとのことでした。筆者が関わる技術は既存技術とは全く異なるユニークでコストが安く高純度製品を生産することが出来ます。工業用はもちろん食品添加が可能な高純度の製品です。
リン酸
リン酸と言いますとご存知の方はあまり多くはないかも知れません。成人体内の成分として酸素、水素、窒素などに次いでカルシウムやリンやマグネシウムがリンの順に多く含まれていて、私たちの骨や歯を形成する大切な成分となっています。
リンは成人の体重の約1%程度占めていると言われています。私たちが食べる食品としては魚や牛乳、乳製品や肉、大豆などに多く含まれています。リンは必須ミネラル成分の一つです。
リン鉱石
原料はリン鉱石です。世界では中国、アメリカ、モロッコ、ロシアなどが主要産出国ですが、埋蔵量でみればモロッコが突出して多いようです。原料枯渇を理由に生産輸出制限をしている国もあります。
得られるリン酸塩とその用途は
大部分はリン酸アンモニウムとして肥料として使用されます。残りが純度を高めて工業用や食品用などとして使用されます。例えば
(1)工業用;-エチレン製造触媒、洗浄剤、歯科用セメント、歯磨き用、金属表面処理剤
(自動車、家電)半導体エッチング用、医薬用
(2)食品用;-食品添加用
など私たち生活の周りで広く使われています。
今回は先方の意思を直接確認したところで、一旦帰国することにしました。
先方の来日
その後体制を整えた先方は我が方の設備の稼働状況を確認するためにスタッフを日本に派遣してきました。運転状況、製造設備のメンテナンス、製品品質、販売状況などを確認して帰りました。
ブリストルへ再び
先方より協議したい旨連絡があったので再度ブリストルへ向かうことにしました。前回と同じように移動はロンドン、パディントン駅から列車でブリストル、、テンプルミーズ駅まで列車です。途中景色を眺めることが出来てヨーロッパの列車の旅は快適ですね。
夕食会
2日目の夜には先方の会社の社長が会社のスタッフの皆さんとともに古城のレストランで食事に誘って頂きました。ワインを頂きながらの食事も半ばになったところで社長が何やらボーイ長に話をしていました。やがてボーイ長は恭しく赤ワインのボトルを社長に差し出しました。
社長は立ち上がって「これは1896年産のワインでこのレストランにも僅か数本しか残っていない貴重品だ」と言って開けました。これを聞いた皆は思わず「ウォー」と声を上げたのでした。味はとろりとした感じでとても美味しかったです。料理は伝統的なイギリス料理のフルコースだったと思いますが名前は憶えていません。
ブリストルの観光スポット
ソーンベリー城
あとで判ったことですが、このレストランは歴史的な由緒ある古城でソーンベリーキャッスルと言って今では一流のレストランとホテルとなっています。またブドウ園とワイナリーを持ち自らのブランドワインを造っているとのことでした。なるほど美味しかったはずです。
ホテルとしてもレストランとしてもトップクラスなのですね。
クリフトンサスペンジョンブリッジ
ブリストルの観光スポット「橋の街」と言われるだけあって川を挟んで切り立った両崖を繋ぐ「世界一古い吊り橋」があります。市の中心部から徒歩30分くらいのところにあります。見晴らしも良く天気が良い日には市民の憩いの場になっています。行ったことはありませんが、橋から下を見るとみが竦む思いがするそうです。
下町の風景から
古い歴史的な建物と新しい建物が旨く調和している落ち着いた街です。またブリストルには大手企業が本社を置き工場なども立地していて活気があります。
ブリストル大学
ブリストルの街のほぼ中心地にブリストル大学があります。ロンドンへのアクセスも良いし物価がロンドンに比べて安いし環境が整っているのでが日本を始め外国からの留学生が多いですね。
日本の大学生が希望する留学先の大学のうちブリストル大学は人気大学の一つになっているようです。この大学の出身者でノーベル賞受賞者も多いようです。
ブリストル・インターナショナルバルーン・フェスタ
4日間にわたって開催される熱気球大会。「ナイトグロー」、花火大会、無数の気球の一斉離陸など無料で楽しめるイベントが数多くあり30年の歴史を持つヨーロッパ最大規模のお祭りとなっています。毎年50万人以上の人が集まるといいます。トルコのカッパドキアでも熱気球を飛ばしていますが、どちらが気球の数は多いのでしょうか。
ブリストルはなかなか素敵な街ですね。新しいドックは外洋に面したところに造られて、旧工場地帯の再開発の進み綺麗な街になったといいます。
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まとめ
プロジェクトのF/S(フィージビリティースタディー)をした結果、
(1)設備の建設、運転、製品には問題がないこと
(2)製品需要に難点がありそうだとのこと
などでした。よって先方はこのプロジェクトを断念するとの連絡がありました。筆者としても実現することを期待していましたが、残念に思いました。
最後までご覧いただき有難うございました。