ジャンボ!(3)(2019/02/24)
目次
調査結果の説明を
調査結果を纏めてタンザニア側に説明するために再度訪問した。隣接するマガジ湖と同様の方式を採れば技術的には可能ですが、現場の設備や居住区を維持するための電力、蒸気、工業用水やさらに製品などの輸送手段をどのように確保するか、さらにこの辺り一帯の自然環境を維持しながら開発をどのように進めるかなど難しい問題も多くありました。
立地は湖畔が良さそうだ
設備の設置場所としては原料クラスト、製品、燃料などの輸送を総合的に考えると湖畔に近い場所が良いと考えられます。生活水も工場で必要とするプロセス水が近くの川から何とか採取出来るのであればやはり湖畔に立地するのが良いと考えられます。
もう一段の調査が必要
世界の市場に通用する品質の製品を作るには設備が必要となりその分コストが高くなります。
この辺りについてはもう少ししっかりした可能性調査が必要になります。
ソーダ灰の生産方式は
ソーダ灰の種類は生産方法には大きく分けて合成灰と天然灰とに分けられます。天然灰にはこれまで紹介してきたマガジ灰とか「ナトロン」灰とかとこれから紹介するトロナ灰があります。合成灰は塩や石灰石を主原料としてソルベイ法で合成されます。現在は主としてヨーロッパで生産されています。
天然灰
トロナ灰
トロナ灰は米国ワイオミング州グリーンリバー市地区で生産されています。トロナ鉱床は地下数百メートルの深さにグリンリバー地区一帯の南北約120㎞、東西約70㎞のやや楕円形に広く広がる鉱石で「主成分はセスキ炭酸ソーダ(Na2CO3・NaHCO3・2H2O)」埋蔵量は1000億トンとも言われています。ソーダ灰に換算すると約560億トンとなりこれは現在の全世界の需要の1200年分に相当すると言われています。何しろ莫大な量です。
トロナ鉱床の生成は
グリーリバー地区周辺の鉱床はかって広大な塩湖が2000万年前から6000万年前くらいの古第三紀時代に干上がり、さらに沈下していき地圧と温度によりトロナ鉱床を形成したと言われています。塩分の多い層は更に下へ沈下したのではないかと考えられています。このあたりにトロナ鉱石が比較的純度が高い理由があると考えられています。
トロナ鉱石の採掘は
少し前の話になりますが、筆者はあるトロナ鉱山の地下400m~500m位にある採掘坑道の現場を見学する機会がありました。坑道先端では切削用のドリルが回転していて鉱石を掘りだしベルトコンベアに自動的に投入しそのまま坑道出口まで搬送され地上の貯蔵庫に保管されます。
合成灰と同じ品質
この鉱石は厄介な塩素分が少ない純度の良い鉱石です。この後溶解されて不純物除去工程を経て炭酸ソーダを晶出させます。乾燥させると既存の合成灰のように純度の高い製品が得られます。これを大型のバラのタンクで貯蔵します。
バラで大量輸送を
米国内の輸送は鉄道、トラックも船もほとんどバラ輸送です。米国内の遠距離輸送はバラ積み貨車を100両以上連結した鉄道輸送で行われています。1編成列車が数㎞にもなりディーゼル機関車は先頭と中央付近と後方の3か所で3重連から6重連で牽引することもあるとのことです。
トロナ灰の競争力は一番
この状況を見てほぼ無尽蔵の良質の原料がありコストが安く品質が良く安定供給が出来るトロナ灰には競争できるとこらはないのではないか率直思いました。
日本もトロナ灰へ転換
その後日本の合成灰生産はトロナ灰に転換せざるを得ない状況に追い込まれていきました。国内工場は順次生産を停止してトロナ灰生産会社と共同生産をする形をとるようになりました。日本への輸送は米国太平洋岸オレゴン州のポートランドに専用の出荷設備を造りここから専用のバラ積み船で日本へ輸送します。日本国内でも小口ユーザー向けを除きほとんどバラ輸送となっています。
日本のソーダ灰需要は減少傾向
日本国内のソーダ灰の需要も主要ユーザーである自動車メーカーなどの海外進出により減少してきています。従ってこのような流れは自然な流れだと思われます。
マウント・ケニヤ・サファリクラブへ
ところでタンザニア政府関係者に説明を終えた後折角の機会ですので一日休暇を頂き皆で「マウント・ケニヤ・サファリクラブ」に出かけることにしました。首都のダーレスサラームから小型機でひとっ飛びです。ハリウッドの名優ウイリアムホールデンの所有だと聞きました。
この辺りはケニヤ山やキリマンジャロにも近く標高が1000m前後で涼しいです。飛行場は草原で有視界飛行しか離着陸は出来ません。
「クラブ」は本館と少し離れた所にある幾つかのコッテジから出来ていました。コッテジの方は夜になると松明のかがり火が灯されて、一回目にご紹介したような猛獣防止のために弓矢を持ったガードマンが交代で入口に立って見張っていました。
食事は本館のレストランで頂くのですがどんな食事をしたか覚えていません。翌日ナイロビに戻りヨーロッパ経由帰国しました。
まとめ
これまでの1回、2回の検討結果も踏まえて纏めてみますと;-
(1)ナトロン湖アルカリ分を回収してソーダ灰にするには、設備をナトロン湖周辺に立地することが良いようです
(2)原料のかん水やクラストが不純物を多く含むために精製設備に多くの投資が必要です。
(3)ソーダ灰製造にはユーティリティー設備、インフラ設備など基本的に多額の費用が掛かり尚且つ製品価格が比較的廉価であることなどから余程好条件が揃わないと成立が難しいです。
(4)米国ワイオミング州のトロナ灰は良質な原料がほぼ無尽蔵にあること、設備投資が少なくて済むこと、製造コストが安いこと、製品品質が良いこと、輸送コストの低減が図られていることなどから現在世界で最も競争力のある製品となっていることです。
(5)従って今後日本と同様に合成灰は米国産天然灰であるトロナ灰に置き換えられていくと想定されることです。
こんなところでしょうか。どうもこれまでソーダ灰事業に関することを書いてきましたが、南インドのツチコリンを除きソーダ灰事業はトロナ灰に押されそうな感じですね。
最後までご覧いただきまして有難うございます。