現役を引退したじじいだよ、あだ名はロン、まだまだ元気なので気張って書いているよ

ミラノへ再び(2019/03/29)

2023/02/10
 
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再びミラノへ

 

最初のミラノ訪問からは少し年数が経ちますが、再びミラノを訪れる機会がありました。今回はビジネスとしての訪問です。

 

ミラノは

 

ミラノは人口130万人超でローマに次いでイタリア第二の都市です。ローマが政治と観光の中心地であるのに対して、ミラノはイタリアの商業、工業、金融、貿易、文化、芸術、観光とそれにファッションの中心地でイタリア北部の中心都市です。

 

ミラノ市街

 

東京羽田からはANAを始め数社が直行便を運航していてアクセスも非常に便利です。ミラノ市内にも周辺にも観光地が数多くあるのでこの街が観光の中心地でもあります。移動には近距離ですと鉄道やバスを上手く使うと良いですね。

 

モンテカティーニ社

 

ポリプロピレン触媒

 

前にも少しばかり書きましたが、イタリアの大手化学会社モンテカチーニ社がチーグラーナッタ触媒の改良触媒でポリプロピレンの商業生産を始めました。1957年のことでした。触媒自体は年々改良が進み1981年の時点で「塩化マグネシウムを担持した四塩化チタニウ+フタル酸エステル」でアイソタクティックインデックス=97%、活性=600~1300Kg/gの高活性を出すところまで来ています。現在ではもっと性能が良い触媒が使われているのではないかと思います。

 

日本の石油化学工業は

 

日本はちょうど石油化学勃興期で多くの企業がポリオレフィンの商業生産には興味を抱いていたことと想像されます。ポリエチレンについては主に欧米メーカーの技術を、ポリプロピレンについてはイタリアを始め主として欧州のメーカーの技術を導入する例が多いようでした。いずれも1950年代後半のことでした。

 

モンテ詣で

 

筆者は石油化学につきましては詳しくはありません。ほとんど素人と言ってもいい位ですが、その素人にとっても興味のある話は日本で商業生産を目指しているメーカーが一斉にポリプロピレンの製造技術のライセンスを求めてモンテカティーニ社を訪問していることです。当時は「モンテ参り」と言われていたと先輩から聞かされたものです。

 

統廃合が進む

 

結局日本のメーカーには1社に供与されました。その後欧米メーカーからライセンスを受けたメーカーや自社技術によるメーカーによるポリエチレンとポリプロピレンの工場建設で1980年には14社に及びました。その後需要の伸びや技術の進展を背景に統廃合が進み2005年の時点で4社に絞られています。

 

モンテディソンへ

 

モンテカティーニ社は本社がミラノにあり1888年硫化鉱鉱山で創業,肥料,化学繊維,金属などで発展してポリプロの生産など先端を走っていましたが、1962年の電力国有化により電力部門分離後の石油化学,合繊,鉄鋼に進出したエディソン社と1966年に合併してモンテディソン社となりました。イタリアを代表するコングロマリットで全産業分野でトップクラスの売り上げを誇る会社となりました。

 

南部地域開発は

 

イタリアの産業政策については良く判りませんが、当時イタリアは国の政策(バノーニ計画)として同国南部地域の開発を一つの重要課題に挙げていた時期がありました。モンテディソン社の計画は時期が合いませんし、ましてやその任の一端を担っていたかどうかは良く判りません。

 

リン酸

 

リン酸技術供与の話

 

そんな中で当社にリン酸の製造技術供与の話が寄せられました。考えてみればモンテディソン社は資源会社ですから原料のリン鉱石からリン酸系肥料など生産していたと見られます。以前に「ブリストルへ再び」の項で書きましたがあの時の会社もグローバルな資源会社でした。あの時と条件がよく似ています。

 

モンテディソン社

 

モンテディソンと言えばかっての名門モンテカチーニ社です。触媒技術やそれを特許として世界の主要国で成立させて後塵の追随を許さない力量や実生産に結び付けるなど相当の技術力のある会社だと思っていました。

 

分野は違いますが無機化学でも製造技術そのものや関連する特許でも整理され高い水準で保持されているものと思い技術対応できるように入念に準備しました。それでもおっかなびっくりでしかも恐る恐るモンテディソン社の門を叩いたものです。一日目の午前中は当方から技術的な説明を一通りしたあと質疑応答となりました。

 

 昼食会は

 

ここで昼食の休憩となりました。例によってイタリアの人はよく昼食時でもワインを嗜むという話は聞いていました。日本ではあまり見かけないようですが、1か2リットル入りでしょうか外側には衝撃防止のために織り込んだ藁縄で覆われた球形のボトルが出され全員に振舞われました。

 

食事の後半には皆さんかなりいい気分になっていました。午後からの会議はさすがにワインのせいもありのんびりムードで進みました。事前に十分に準備をしてきたつもりでしたので全くの拍子抜けでした。リン鉱石やリン酸とその応用分野についてもモンテディソン社にとっては得手の分野の一つではないかと考えていたのですが・・。

 

リン酸の製造方法

 

高純度リン酸の製造方法には主に乾式法と湿式法の二つがあります。
原料のリン鉱石から既にリン酸肥料は製造しているので、これを精製して高純度の食添用ないし工業用リン酸を作りたいというものです。
高純度のリン酸を作るには普通乾式法と呼ばれる方法で製造されます。ただこの方法は設備費が高く製品コストも高くなる傾向があります。

1)乾式法 リン鉱石にコークスと珪石と混ぜて電気炉に投入して溶融します。発生したリン蒸気を冷却して黄リンににしてさらに空気とともに燃焼して五酸化リンにして水に吸収させます。純度が高く製品が得られます。
2)湿式法 リン鉱石を硫酸に溶かしてリン酸と石膏を得ます。得られるリン酸の多くはリン酸アンモニア系肥料になります。また一部のリン酸は精製されて高純度のリン酸となります。

 

リン酸の用途

 

高純度のリン酸は次のような用途があります。例えば;-
(1)工業用;-エチレン製造触媒、洗浄剤、歯科用セメント、歯磨き用、金属表面処理剤
(自動車、家電)半導体エッチング用、医薬用
(2)食品用;-食品添加用
など私たち生活の周りで広く使われています。

 

クロトーネ

 

このプラントの建設予定地はイタリア南部のイオニア海に面した人口約6万人の港湾都市クロトーネ市とのことでした。古代ギリシアの植民都市クロトーンを起源とする街だそうです。またサッカーチームFCクロトーネの本拠地でもあります。クロトーネ空港があり国内線、国際線が就航しています。アクセスも良いようです。鄙びた観光地として結構面白うそうな地域ですね。

 

クロトーネ市

クロトーネ広域ヴュー

サンタ・セベリーナ城

 

クロトーネ市はイタリア半島の靴底で言えば爪先方向に向かって進みいわゆる「長靴の土踏まず」部分が終わり前足底が始まる部分にあります(上の地図の赤印)。

 

クロトーネ市街

 

どうやらクロトーネは農業、漁業それに歴史と観光の街のようです。古代ギリシャ時代の遺跡や中世ヨーロッパ時代の建物など海岸の美しさとともに観光出来ますね。爪先から海峡を隔ててすぐ先にシチリア島があり、パレルモやカターニアそれにマルタ島などの観光地に繋がっています。一度ゆっくりと観光してみたい気分になりますね。

 

シチリア島には多くの古代ギリシャ時代の遺跡があります。パレルモにはアテネの「パルテノン神殿」とそっくりの「コンコルディア神殿」が残されていますし、またアテネにある「古代劇場跡」とそっくりの劇場跡も残されています。

古代ギリシャ時代の劇場跡

 

最近では何度もイタリアに行かれた方は足を延ばしてマルタ島に行かれる人も多いようですね。日本もそうですがイタリアも北と南とでは風景がかなり違うようです。

 

モンテのその後

 

モンテディソン社のその後の検討結果がどうなったのかは知る由もありませんが、少なくとも設備建設までには至らなかったことだけははっきりしています。

 

他社のことをあまり述べるつもりはありませんが、ただ一つだけ不思議に思うことはなぜ世界の先端を走っていた名門企業がなぜ元気が無くなってしまったかということです。それだけ畏怖の念と尊敬の念をもって接していましたので筆者だけが特にそのように思うのかも知れません。

 

関連記事

 

(1)ブリストルへ再び          2019/01/11

 

まとめ

 

天下の名門モンテディソン社との折衝を通じて感じたことは幾つかありますが、一つだけ書かせて頂きたいのは目標を持ち元気よく前進し続けることがいかに大切かということでした。生意気なことを言ってすみませんが本当にそのように思いました。( 追記;よく思い出せないのですが、ミラノ土産は「二つ折り財布」だったかな、2019-11-1 )。

 

最後までご覧いただきまして有難うございました。

 



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