住みやすい街、メルボルン(2019/09/12)
メルボルンへ
オーストラリアのパースについては「パースはきれいな街です」2019-4-24付けで書きましたが、このパース訪問より数年前にメルボルンを訪問していました。これがオーストラリアを訪問した最初の都市でした。
メルボルンには成田空港からメルボルン国際空港まで日本航空やカンタス航空の直行便があり約10時間30分のフライトで着きます。
メルボルンは
メルボルンは人口がおよそ400万人近いシドニーに次いでオーストラリアで第2の都市です。ヴィクトリア州の州都でもあります。現時点ではシドニーが最大都市ですが人口増加率は地形的な理由などからメルボルンの方が大きいのでこの2大都市はいずれ拮抗する日も近いかも知れません。
シャトルバス
メルボルン国際空港から市内へは、スカイバスというシャトルバスが運行しています。赤い車体の大型バスで、市内中心部のサザンクロス駅地下のバスターミナルが終点となります。所要時間:サザンクロス駅まで約20分。
タクシー
到着ロビーを出るとタクシー乗り場があり車が待っています。タクシーはメーター制です。人数によっては1人あたりの料金がスカイバスとあまり変わらないので、直接ホテルまで行く方が良いかもしれません。
住みやすい街
メルボルンは2002年と2004年の二度にわたり英国の週刊新聞エコノミスト誌により「世界で最も暮らしやす都市」として一位を獲得しています。
近代的でビジネス的な都市シドニーとは違って、佇まいもヨーロッパ風な建築物が残り落ち着いた感じがします。サンフランシスコにもありましたが、路面電車がいいですね。コーヒーが似合うのでしょうか。
メルボルンの歴史
1850年代にヴィクトリア州中央部で金が発見されてゴールドラッシュが始まりました。メルボルンは19世紀半ば以降金採掘を目指して移民などが集まり人口が急激に増加して発展しました。
初期の頃はイギリス人やヨーロッパ大陸出身者が殆どでしたが、金採掘が進むにつれてインド系、中国系、現地先住民系などの人達が加わり多様化しました。
オーストライア連邦は1901年1月1日に英国王を君主とする立憲君主国として誕生しました。政治的にも経済的にも英国の影響を強く受けていました。貿易も英国との取引が大部分を占めていました。
1927年に新しく建設されたキャンベラに首都が移転するまで27年間メルボルンはオーストラリの首都でした。
アジアへ志向
最近では政治情勢の変化もありアジア志向が強くなっています。JETROの2017年の通関ベースの輸出入データでは日本や中国などアジア諸国との貿易が増加しています。特にここ数年の中国との貿易の伸び率は目覚ましいものがあります。
表ー1 オーストラリアの輸出入量、2017年、通関ベース
輸出 | 割合 | 輸入 | 割合 |
---|---|---|---|
鉄鉱石 | 20.9% | 製油 | 6.6% |
石炭 | 19.0% | 乗用自動車 | 7.9% |
天然ガス | 8.7% | 貨物用自動車 | 3.1% |
化学製品 | 2.9% | コンピューター と通信機器 | 7.3% |
医薬品 | 1.2% | ||
乗用自動車 | 0.3% | ||
非貨幣用金 | 5.9% | ||
金額(単位) 100万豪ドル | 301,305 | 金額(単位) 100万豪ドル | 288,327 |
表ー2 オーストラリアの地域別輸出入量、2017年、通関ベース
国別 | 輸出 | 輸入 |
---|---|---|
日本 | 14.6% | 7.3% |
中国 | 33.0% | 22.2% |
韓国 | 6.7% | 7.2% |
台湾 | 2.9% | 1.5% |
米国 | 3.9% | 10.3% |
英国 | 2.0% | 2.4% |
金額(単位) 100万豪ドル | 301,305 | 288,327 |
日本との関係
オーストラリアと日本との関係は上の表からも判るように非常に緊密な関係にあることが判ります。即ち日本はオーストラリから大量の鉄鉱石、石炭、原料塩、天然ガスなどを輸入しています。
一方日本からオーストラリへは自動車、石油製品、産業用機械、自動車部品、ゴムタイヤチューブなど工業製品となっています。資源に乏しい日本は資源大国のオーストラリアから資源、エネルギーを大量に輸入しています。非常に相性のいい組合せとなっています。
製造業
金を採掘するのにはダイナマイトを使用していましたが、このダイナマイトを製造するためにアンモニア、硝酸、塩酸、苛性ソーダなどの基礎化学品が必要になります。これらを製造する工場などがメルボルン周辺に立地したものと思われます。
今日ではとくに繊維・衣料品、自動車、機械、化学や石油化学などの工場に特色があり、その規模はシドニーと1、2を争う規模となっています。港湾は都心部付近から南部の下流のヤラ川沿岸とポート・フィリップ湾岸にあります。
移民の人たちのコミュニティー
金採掘が一段落したあとはこれらの人たちは都市に戻り、それぞれコミュニティーを造りました。例えばイタリア人街、ギリシャ人街、インド人街や中華街などが有名です。メルボルンの中華街は横浜の中華街よりはやや小ぶりのようです。
化学製品の自給化
豊富な天然資源
資源大国オーストラリアには化学製品を自製したいとの希望が一時期強く意識されたようです。西オーストラリア州ピルバラ地区には大量の鉄鉱石が開発されています。
また石炭も大量に採掘されています。オフショアでは石油や天然ガスが採掘されていて、特に天然ガスは液化して日本に大量に輸出されています。
ソーダ灰のフィージビリティー
このような環境の中でオーストラリアで化学、特に基礎化学品であるソーダ灰の生産の可能性について調べることになりました。必要な主要原料としては原料塩、石灰石、アンモニアです。原料の調達自体はそれほど問題ではなかったと思いますが、生産される製品ソーダ灰の販売の問題がありました。
ソーダ灰の主な用途は板ガラス、洗剤、水処理剤、基礎的なアルカリ源として使用されます。量的に最も多いのが自動車用や建築用の板ガラスです。
西オーストラリ州には大規模で近代的な塩田が日本の資本なども入った形で大量生産されるようになりました。現在は高品質の原料塩は日本に大量に輸出されています。筆者が数年後にパースを訪れたのはこの原料塩を使ってソーダ灰の生産のフィージビリティーを検討するためでした。
ソーダ灰の生産のフィージビリティー・スタディーについては、トルコ、インド、ヴェネズエラ、タンザニアなどの諸国で行いました。グローバルな視点で見た場合、原料鉱石の埋蔵量が実質的にほぼ無尽蔵で品質、コストの点で米国ワイオミング州グリンリヴァーで産出する天然ソーダ灰を採掘して精製した「トロナ灰」が最も競争力があるのではないかと筆者は考えています。
日本を主力とした輸出基地はオレゴン州ポートトランドに輸出専用基地を持ち大量バラ輸送が可能となっています。日本にもバラの受け入れ基地が設備されて日本へはバラ積み専用船で低コストによる輸送体制が整っています。
米国トロナ灰
現に日本の合成法によるソーダ灰は米国のトロナ灰に市場は実質的に取って変わられました。唯一インドのツチコリン・アルカリ・ケミカル社を除き、今後徐々に残りの合成灰も淘汰される可能性があるのではないかと筆者は考えています。
産業構造は
オーストラリアの場合、現在のところ産業構造は天然資源を輸出して工業製品を輸入する形となっていますが、これは正解ではないかという気がします。
今後はむしろ貯えられたエネルギーをこれから本格化するITとかAIとか先端分野の技術開発に向けるのも良いのではないかと個人的には密かに考えてみたりしているところです。
メルボルンの観光スポット
堅い話になって申し訳ありません。ところでメルボルン市内の観光スポットは多いです。とても簡単には回れないのですが、時間がないので敢えて一日で回るコースを見てみました。
フリンダースストリート駅
メルボルンのランドマークは何と言っても中心部、フリンダースストリートとスワンストンストリートの交差点に位置する、1日市民から観光客まで約25万人が利用するターミナル駅です。
ここから、メルボルン郊外への電車が出ています。1854年に完成した、オーストラリア国内初の駅。エドワード王朝風の豪華な駅舎はメルボルンのシンボルです。
セント・パトリック大聖堂
1848年に聖アウグスチノ修道会が大聖堂建設計画を立て、ウィリアム・ウォーデルのデザインによりゴールドラッシュ期に建設が始まり1939年に完成した。
教皇パウロ6世が教会堂より上位のバシリカであると認定した。オーストラリア最大のゴチック建築。内装外装ともに雰囲気があり荘厳な感じに溢れています。
ヴィクトリア州立図書館
1854年定礎、1856年、開館:所蔵数 3,800、蔵書数200万冊の多さもさることながら上の写真では放射状に広がる閲覧机が配置されています。世界有数の展示型図書館となっています。
チャイナタウン
メルボルンのチャイナタウンは、1850年代に開設されたリトル・バークストリートを中心に、スワンストンストリートからスプリングストリート辺りまでの一角に位置し、19世紀の建物が並ぶオーストラリア最古のチャイナタウンです。
クィーンヴィクトリア・マーケット
1878年オープンなので既に130年以上の歴史があるメルボルンの台所です。メルボルンに来たらぜひ訪ねてみたい場所の一つです。内部はとても広くエリアごとに大きくわかれています。
例えば果物や肉などの生鮮食料品、チーズなど加工食品、衣料品、、お土産などの雑貨などです。またフードコートやカフェを楽しめるエリアもあります。
無料トラム
少し時間の余裕がある方はスマフォの地図を片手に乗り降り自由のトラムに乗って市内の観光スポットを回るのも「有り」かなと思います。
無料トラム;35番トラム
回れる観光スポット、例えば;-
- セントパトリックス大聖堂
- セントポール大聖堂
- ブロックアーケード
- デグレーブス・ストリート
- ビクトリア州立図書館
- メルボルン博物館
- クイーンビクトリア・マーケット
- フリンダースストリート駅
- フェデレーションスクエア
- メルボルン中華街
などがあり主要観光スポットはカバーされています。
ウルル・カタ・ジュタ国立公園
メルボルンからは少し遠いのですが、オーストラリア大陸の中心部にあるエアーズ・ロックがあるウルル・カタ・ジュタ国立公園は、1000m級の一枚岩で出来た山ですが、1987年世界複合遺産に登録されこの地の先住民族文化や精神が息づく聖地でもあります。
最近先住民の聖地でもあるウルルへの「登山禁止」が決まり、2019年10月26日より観光客がウルルへ登ることが禁止されるとのことです。筆者が一度は行きたかったところですが残念です。
まとめ
- オーストラリアは広くてでかい国です。資源が豊富でその豊富な資源を輸出して工業製品を輸入しています。今後は先端技術開発に注力する模様です。大陸一つを一国で占めるオーストラリは日本人の筆者から見れば羨ましい限りです。
- オーストラリアにおけるソーダ灰の生産についてはマーケットに工夫が必要のようです。環太平洋地域では日本も含めて米国のトロナ灰が品質的にもコスト的にも優位な状況にあると考えられます。
- メルボルンは魅力的な都市です。よく言われるようにヨーロッパ風の歴史的建物と文化が残り落ち着いた住みやすい街だとの印象です。外国人留学生も多いようです。
最後までご覧いただきまして有難うございます。