発展する国インド(4)(2018/12/17)
準 備
成立した契約に基づき作業が始まりました。インド企業は国内の許認可手続き、用地確保、原燃料の確保、製品販売先の確保などを最終的に確定していきました。また日本側では基本設計、詳細設計、機器の発注、インド側の運転要員の訓練などが行われました。
この間インド側、日本側から相互に訪問して作業を進めました。この間2年はかかったと思います。
現地工事始まる
インド人は結構イベント好きのようです。現地で建設が始まりましたが、まだほんの初期の段階でなにやらセレモニーらしきことを始めました。
日本ですと着工の段階で鍬入れ式や広く工事の安全を願って安全祈願祭などを行い、あとは工事が無事終わり完工式や試運転開始の時に火入れ式などをなどを行うのが普通ですが、インドではどうなっているのでしょうか。
筆者が訪問した時には、日柄がよかったのか建設途中の主な設備毎にセレモニーをしていました。
基礎工事など人手でやれる作業はなるべく人手で行うようにしているようでした。
前にも書きましたが、このプロジェクトの主原料の一つは工業塩です。この工場に隣接した塩田で生産されたものを使用するので安価で安定的に入手出来ます。
原料工場建設
もう一つの主原料はどうやらこの工事と同時に新たに建設している工場から供給されるようでした。天然ガスを分解して得られるアンモニアと炭酸ガス
がこの工場に供給される予定となっていました。
製品の需要
ソーダ灰
この工場ではソーダ灰と窒素系肥料が生産されます。ソーダ灰の需要先は板ガラス、建設資材用ガラス、洗剤、石鹸などの一般用など幅広く使用されます。
自動車用板ガラス
さらに板ガラスの主要消費先は自動車です。日経新聞(2018-1-11)によるとインドの2017年自動車の販売台数は401万台(前年比10%の伸び)でドイツの385万台を抜いて第4位となりました。
因みに1位は中国の2887万台(同3%)、2位は米国の1723万台(同▲2%)、3位は日本の523万台(同5%)でした。一人当たりのGDPの伸びを考えるとこの数年のうちに日本も追い抜かれる感じがします。
またインドの自動車工場はMARKLINES社のインドの完成車メーカー工場立地マップよればほぼ全州に広がっているようです。
日本ではガラス工場までのソーダ灰の輸送はバルクがほとんどですが、輸送費低減のためにツチコリン近隣にガラス工場が立地すれば面白い絵が描けそうに思います。
板ガラス製造に関しては日本企業は早くから現地企業を通じて生産しております。ツチコリンから近いところでは既にチェンナイやアンドラプラディッシュ州にも日本企業が進出しているようです。トルコのガラス大手がインド企業を買収する形で進出すると最近報道されています。
肥料は
肥料は一方併産される肥料は稲作用や一般用肥料として大量に使用されます。この肥料は稲作には適しているので特に稲作が盛んな南インドでは消費に問題はなさそうです。
こうしてみてくるとこのプロジェクトはどうやら上手く行きそうです。苦労のし甲斐があったというものです。
ツチコリン
ツチコリンは人口約24万人の街です。州都のチェンナイから南へ580㎞のところにあります。観光スポットも特にこれといってなさそうです。
まとめ
4回にわたって書いてきましたインドに関する記事はこれで終わりますが、契約から工場建設・運転まで関わることが出来たことで少しでもインドと日本のためになったとしたならば大変有難いこと感謝しております。この仕事を通じてインドの国の一端を知ることが出来ました。
(1)インドは人口が特に子供の数が多く発展する国だと感じたこと
(2)人口は数年のうちに中国を抜いて世界第1位になること
(3)GDPの伸びも大きいですが、中国に追い付くにはもう少し年数がかかること
(4)インドの企業から同じような要望を受けましたが、当たり前ですがFS(可能性調査)の段階で条件の揃ったところでプロジェクトは成立すること
(5)このプロジェクトはアルカリ、肥料共に国内に大きな需要があること、原料入手が容易なことなどから米国トロナ灰に対しても十分な競争力を持って存続できると思われます。
などでしょうか。最後までご覧いただきまして有難うございました。